テニスコートの無い中学にもテニス部があることを知って、
密かに喜ぶレイジ。
でも、レイジは、実は、
小3からクラブでサッカーをやっていたのだ。
同じチームのゴールキーパーだったケンイチから、
当然のようにサッカー部に誘われるレイジ。
だが、テニスも面白そうだとつい本音を漏らしてしまうレイジに、
ケンイチはテニスをバカにするような発言をして翻意させようとする。
他人や他のスポーツをバカにすることが嫌いなレイジに、
強い言葉でたしなめられ、その怒気に凍りつくケンイチ。
ケンイチの問題発言に怒りをあらわにするレイジだったが、
テニスコートの無い中学にもテニス部があることがわかって、
実は内心ほっとしていたのだった。
でも、サッカーを続けたい気持ちもある。
サッカーもテニスも両方やりたいのが本音だ。
さあ、果たして、そんなことはできるのだろうか?
それでは、『トップ1%プレイヤーへの道!』第5話、
『なんで部活動は同時にいくつもやってはいけないんだ?』
をどうぞ!
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突然のボクの怒りで、ケンイチは明らかにうろたえていた。
「い、いや、そ、そういうつもりは全然無いんだよ。
現実にサッカーや野球をやる女はいないだろ。
ソフトボールをやる女はいても。
ほ、ほら、それに、テニスといえば女の子のパンチラだから。」
「また、それかよ。」
怒りモードになっていたボクだが、
不覚にもフッと笑ってしまった。
必死で弁明しながら相手の顔色をうかがい、
そして、下ネタなどで笑いを誘い、
気まずい雰囲気を解消させようとする。
何よりも和を大事にするケンイチのいつもの手だ。
体は大きいが、心は小さかったりする。
小心者だが、そこが逆にヤツのかわいい所だ。
「あのなあ、ケンイチ。
サッカーや野球を女がやらないのは、
スポーツとして男にしかできない厳しさがある、
とかいうわけじゃなくて、
単に女に人気がないだけなんだよ。」
「人気がない?」
「だって、そうだろ。
女はそもそも野球なんかあんまり見ないし、
ルールさえ知らないのがほとんど。
サッカーだってそうだ。
プロリーグさえ無い日本だけじゃなくて、
あれだけサッカーが人気のヨーロッパだって、
女には全然人気がないらしいじゃないか。」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「テニスは女としての華やかさやオシャレさも表現できるから、
人気があるとボクは思うんだ。
女にも人気があるし、男にも人気がある。
テニスは男女問わず人気のスポーツなんじゃないのか?」
「なるほどね。」
ケンイチはうなずきながら聞いているが、
ちゃんとこっちの言っていることを理解しているのかは不明だ。
明らかなのは、
ボクの機嫌が直ったかどうか、こっそり顔色を伺っている、
ということだけだ。
そして、ボクの機嫌が直ったのを確認すると、
今度はお願いモードだ。
「レイジ、お願いだからさあ、
テニスなんかに興味持たないで、
オレとタカシと3人で一緒にサッカーで全国目指そうぜ。」
「うん、それもいいんだけどな。」
「そもそも、レイジは、5年生の時、
イングランドとフランスに遠征までしておいて、
今さらサッカーやめるなんてもったいないじゃないかよ。」
「あれはたったの2週間だぜ。
それに、まだ、サッカーやめるなんて言って無いじゃないか。
ただ、テニスも面白そうだから、
ちょっとやってみたいなって思っただけだよ。」
5年生の夏休みにイングランドとフランスに遠征するという話になって、
ボクのいた市と、日本で一番サッカーが盛んなあの市と、
合同で行くことになった。
代表に選抜されて、というわけではない。
親が承諾してお金さえ出せば誰でも行ける企画旅行なのだ。
ボクのチームからは、
5年生と6年生と合わせて4人だけが行くことになった。
団体旅行とはいえ、もちろんヨーロッパ往復長期旅行だから、
もちろんお金もいっぱいかかる。
当時海外旅行はまだ一般的ではなかったのに、
貴重な経験をさせてやろうと大金を出してくれるなんて、
なんて子供思いの親だろう。
テニスもゴルフも小さい頃からさせておいてよ!
なんて、わがままばっかり言ってきたが、
実は人並み外れて恵まれた環境を与えてくれることもあったのだ。
イングランドのシェフィールドという所に1週間、
そして、フランスのパリに1週間。
シェフィールドでは、大学の寄宿舎に寝泊まりして、
午前中は英会話のレッスン、
午後からは現地のクラブチームとサッカーの練習や試合。
夜になるといろんなイベントがあって、
現地の人たちとの交流を通じていろいろ体験しましょうという企画だ。
いろいろと文化的な新鮮な驚きはあったのだが、
一番驚いたのは、
一緒に行ったあの市の連中のサッカーのうまさの方だった。
現地のイングランド人は同じ年でももう既に体がでかくて、
パワーやスピードはあるんだけど、
テクニックの面では日本人の方が上だと感じた。
特にあの市の連中は、技術的にさらに器用で、
細かいフェイントや特殊な技術などに秀でている。
リフティング自体のレベルも高いけど、
そこからオーバーヘッドシュートを背後のゴールに決めた時は、
さすがのサッカーの本場のイングランドの少年たちも唖然としていた。
フランスのパリでは一転して観光ばかり。
街並の美しさには驚くばかりだったけど、
やはりボクとしてはフランスでもサッカーがしたかった。
イングランドだけでなく、フランスも当然、
日本とは違ってサッカー大国だというのに!
しかも、パリではホテルの3人部屋でちょっと窮屈に感じた。
シェフィールドの大学の寄宿舎は広くてきれいな個室だったのだ。
ちなみに、ボクとタカシはこのヨーロッパ遠征には参加したが、
ケンイチは参加していない。
「なあ、レイジ、悪いことは言わないからさあ、
オレたち3人で一緒に楽しくサッカーやろうぜ。」
「あのなあ、実はな、
サッカー部とテニス部と両方所属しようと思ってるんだ。
いい考えだろ。」
「えっ・・・。」
口をぽかんと空けてあっけにとられた様子のケンイチ。
「なんだよ、なんか文句あるのか?」
「レイジ、知らないのか?
部活は1つだけしか入れないんだぜ。
常識だろ。」
「えっ、なんだって! 1つしか入れない? そんなバカな!」
今度はこっちがあっけにとられる番だ。
知らなかった。
部活には1つしか入れないだなんて。
ボクはサッカークラブに所属して本格的にサッカーをやっていたけど、
野球やソフトボールもやっていたし、剣道もヨットもやっていた。
バスケットボールやハンドボールやドッジボールも、
大好きだし得意だった。
その上、小さい頃からテニスかゴルフもやらせておいて欲しかった、
と思っていたぐらいだから、
スポーツは色々やるのが当たり前だと思っていたのだ。
野球はリトルリーグに所属するような本格的なものじゃなくて、
校庭や空き地で近所の子供たちとやっていた程度のものだけど、
でも、軟球だけでなく、ヘルメット無しで硬球も使ったりしていた。
野球に関しては、技術書を買ってきて、
カーブだ!フォークだ!ナックルだ!って感じで、
変化球を投げるのに挑戦して、
たまにうまく変化してバッターを空振りさせると、
大はしゃぎしたり。
剣道は、近くの剣道場に週1ぐらいで夜通っていた。
相手は大人ばかりで、
面をばんばん打たれて頭ががんがん痛くなるわ、
小手を打たれて腕がびりびり痺れるわ、
防具なんかの変なにおいがぷんぷん体につくわで、
あんまり面白くないことばかり。
面白いと思えたのは、
子供同士で半分ケンカみたいな試合をする時だけ。
あと、剣道やっててよかったと思えたのは、
棒が1本ありさえすれば、どんな相手でも、
あまり怖さを感じなくなったことぐらいかな。
ヨットは一番小さなディンギーってヤツだけど、
家のすぐ近くに大きなヨットハーバーがあって、
ヨットスクールの生徒を募集していたから、
安いから自分で勝手に1人で申し込んだ。
何が怖いって、海の怖さよりコーチの怖さ!
海の怖さを知り尽くしてるし命がかかってるからだろうけど、
もうちょっと海遊びの楽しさを味わわせて欲しいなあ。
といっても面白いから何度も更新したけど。
とにかく、スポーツの原点は遊びなのだ。
遊びは1種類だけしかやっちゃダメだなんておかしいと思う。
缶蹴りもやれば鬼ゴッコもやるし、
将棋もやればオセロもやるし、
面白い遊びだったら何でもやるでしょ。
まあ、剣道はスポーツというより武道だけど。
もちろん、野球一筋50年というのも、それはそれで立派だし、
職人のように技を極めるにはそれぐらいやらなくちゃとは思う。
ただ、テニスとサッカーを両方やりたいというヤツには、
やらせてくれてもいいんじゃないのか?
(第6話につづく)
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そもそも、テニスは民間の倶楽部で本格的にやって、
サッカーは中学の部活でたまにやればいいだなんて、
お気楽に考えていたレイジ。
民間のテニス倶楽部がダメになって、じゃあ、
どうせならサッカー部とテニス部と両方所属すればいいや、
だなんて世間知らずで怖いモノ知らずのレイジ。
さあ、果たして、レイジは、
テニス部とサッカー部の両方に所属できるのか?
次回『トップ1%プレイヤーへの道』第6話、
『やっぱりひたすら球拾いとランニングと素振りばっかりかよ!(予定)』
を請うご期待ください!
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それでは、今日第6話のワンポイント・フィロソフィです。
フィロソフィ(philosophy)とは哲学のことです。
哲学とは、自分自身の経験などから得られた基本的な考え、
のことをいいます。
『 スポーツの原点は遊戯だから
幼い頃からいろんなスポーツをやる方が自然で
しかも将来的に選択肢が増えて
かつバランスのとれた体作りにもなる 』
『 テニスで強くなるためには
テニスばかり一生懸命やることも大事だが
他のスポーツから得られるものも予想以上に多い 』
もしボクが幼い頃から、
サッカーや野球や剣道やヨットだけでなく、
テニスもゴルフもしていたとしたら・・・。
いざ中学から本格的にテニスだけをやろうとした時には、
幼い頃にしか身につけられないようなテニスのテクニックは、
既にマスターしている状態だ。
そして、それだけでなく、
いろんなスポーツをやっていたおかげで、
本格的に競技としてやる時のためのバランスのとれた肉体も、
その時点で既に基礎的なものを作りあげることができているはずだ。
つまり、小学校ぐらいまでは、
いろんなスポーツに慣れ親しむべきだ。
といっても、スポーツは楽しい遊びだ。
最初から、稽古!だとか修行!だとか鍛錬!だとか、
必要以上に外部から厳しさを要求したり、
あるいは、逆に、遊びはテキトーにやって勉強は真面目にしなさい!とか、
遊びに一生懸命になることに罪悪感を持たせようとしたり、
そんな余計なことを大人はやってはいけない。
遊びだろうと勉強だろうと仕事だろうと、
楽しければ自然と一生懸命になるのが、
人間の本当の姿なのだ。
そして、競争する心も自然に心の中にあるものなのだ。
最初から、勝て!負けるな!優勝しろ!とか、
必要以上に外部から競争心をあおってプレッシャーをかけたり、
あるいは、逆に、差がついたらかわいそう!とか、
競争そのものを頭から否定して勝ち負けや順位をあやふやにしたり、
そんな余計なことを大人はやってはいけない。
競争して勝ちたい!負けたくない!もっと上を目指したい!
誰かに言われなくてもそうやって自分から必死に努力するのが、
人間の本当の姿なのだ。
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