あれは何を喋ってたの?」
ずっと黙って聞いていただけのアキラが、
ユミに話しかけられてやっと口を開いた。
「あれはね、レイジが、
『戦術に集中して戦術をこなせ!』って言うから、
戦術を自分に言い聞かせてたんだ。」
「『強く打っちゃヤーよ!』ブツブツ・・・
『普通1番だろ!』ブツブツ・・・って?」
「あのねえ!
そうじゃなくて、
『まず最初のファーストは、入れるだけ入れるだけ!』とか、
『チャンスボールがくるまで、がまんがまん!』とか、
『ファーストはバックに入れろ!』とかだよ。」
「なるほど。それだけ?」
「それとか、
『短くなったらバックにアプローチ!』とか、
『自分が出来ることだけに集中しろ!』とか、
『ダブりそうだからとりあえずファースト入れるだけ!』とか。」
「そのブツブツのおかげで集中できたの?」
「うん、おかげで、勝ちビビリしなかった。
戦術をこなすことに集中するだけで、
勝ち負けはあまり意識しないで済んだからじゃないかな。」
「なるほどね。
それはそうと、この3つの戦術は、
シングルスの戦術だったけど、
ダブルスでも使える戦術なの?」
ユミはまたボクの方に聞いてきた。
ボクはもちろん丁寧に答える。
「もちろん使える。
まず1つ目の『普通1番だろ』戦術。
ダブルスでも同じように、
サービスゲームの最初のポイントは、
ただ入れるだけのセカンドサーブを、
ファーストサービスで打つ。」
「うん。
そして、プレッシャーのかかったポイントでも、
同じように、ただ入れるだけのセカンドサーブを打つのよね。」
「そう。
でもね、この戦術をコーチングするとね、
ボクの担当する上級クラスのたいていの生徒さんはこう言うんだ。
『ファースサービスで、
ただ入れるだけのセカンドサーブなんか打ったら、
ボコボコに打ち込まれてしまいますよ!』
ってね。」
「それで?」
「それで、ボクはいつもこう言うんだ。
・・・
(つづく)
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